ソラのカケラ

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日記と共に自作小説を載せています♪たまに読んだ本の紹介もしています。イラストとかも載せていくつもりです。怖い話募集中

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Song of wheels

  • 2010.03
  • 29

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 風雨に曝しながら保管してきたせいで錆び付いた車輪はギィギィと悲鳴に似た甲高い音をたてながらもしっかりと僕等を支えて運んでくれている。
まだ、明け方だということだけあって人は見当たらない。そんな静けさの中を響く車輪の軋む音が少し心地よく感じる。たぶん、それは君が後ろにいるからなのだろう。聖夜が近づいてくる中、背中に感じる確かな体重と温もりがとても心地良い。
昔はロードレーサーが欲しいと思っていたけれど、今となってはこのママチャリと呼ばれるような自転車を使い続けていて良かったと思っている。ロードレーサーに乗っていたら君を後ろに乗せられなかったのだから。
 線路を横目に上り坂にさしかかった。そんなに急な坂ではないからいつもなら一息に立ち漕ぎで登りきるのだけど今は君が後ろにいるから精一杯、座ったままペダルを漕ぎ続ける。
「ホラ、もうちょっと。 あと少しだよ。 頑張れ、頑張れ」
 なんとも楽しそうに応援する声が耳元から聞こえる。
「なんかさ、二人きりみたいだよね。この世界に僕たち二人だけ」
 静かすぎる世界。朝早くの線路沿いの上り坂で必死にペダルを漕ぐ足を動かしながらポツリと呟いた。君にも聞こえないくらい小さい声でだったけど。
「「……あ」」
 坂を登りきった瞬間、同時に二人分の声が漏れる。上り坂を越えた先にあった朝焼けは僕にはもったいないくらい綺麗だった。そのまま二人とも固まってしまう。それくらい綺麗なのだ。
 後ろにいる君が笑う気配を感じたから、振り向いて一緒に笑いたかったけれどやめた。いや、出来なかった。今振り向いたら君に泣き顔を見られてしまうから。
 朝焼けに見蕩れた後もう少しだけ自転車を進めて駅の建物までたどり着く。逆方向の市街に行けばもっと大きなロータリーのある駅があったけれど、わざわざ小さな駅までやって来たのだ。
 少しだけだから、と誰にともなく言い訳をして駅前に自転車を止め鍵を閉める。その動作、一つ一つが無性に僕の胸を締め付けた。
 券売機まで行くと君が先に切符を買っていた。紙幣を使って買うような券売機で一番高い切符。僕はそこがどんな街なのか、そこに何があるのか全然知らない。僕が数枚の硬貨を入れて買うのは初めて使う見送り用の一番安い入場券。どうせ、十歩も歩かないうちに改札で使うのに大事そうにそれをポケットに仕舞い込んだ。
 君は先に改札を抜けてホームに立とうとしたんだろうけれど一昨日買った大きな旅行鞄が改札に引っかかってよろめき、僕に視線を向けてきた。
 その視線にはどんな気持ちが詰まっているんだろう、そんなことを考えながら、目を合わせないように意識しつつ頷いて引っかかっている鞄をはずしてあとに続く。ちょうどその時、電車がホームに入ってくるベルの音が聞こえてきたから駆け足でホームにたどり着くと電車がドアを開いたところだった。
 僕の為でも二人の為でも無く、君の為だけのドア。
 何万歩よりも距離がある一歩を踏み出して君は電車に乗り込み、振り返らず、叫ぶように「約束だよ。必ず、いつの日か、また会おう。必ずだよ?」と約束を紡ぐ。
 僕は応えられず、言葉も見出せずに俯いたまま、ただただ手を小さく振っていた。
 電車のドアが閉まると僕の手の動きは鈍くなる。
 そして電車が動き出すと同時に、僕は弾かれるように後ろを振り向き、走り出す。

 間違いじゃない。あの時、君は――

 改札が開くのが待ち切れず飛び越え、自転車に鍵をかけたことを悔みながらも、焦りながら鍵を外し、サドルに腰を下ろすことはせずペダルを精一杯踏み込む。
 さっき登って来た坂を今度は全力で駆け降りる。風を追い越すように走る自転車の錆び付いた車輪は雄叫びとも取れそうな、僕に追いつけと叱咤するような悲鳴を上げながら駆け続ける。精一杯、電車と並ぶけれどゆっくりゆっくりと離されていく。
 足りない。まだ、まだ遅い。どうしてロードレーサーを買わなかったんだ、とつい先刻とは全く逆の考えに至る。
 どんなに足を動かそうとしてもこれ以上速くは動かせなくて、自転車の速度は上がらない。
 それでも、無我夢中でペダルを踏み込み続ける。

 泣いていたんだろう? あの時、ドアの向こう側で。
 声が震えていたから、顔を見なくてもわかったよ。

 不意に、小石を踏んだ自転車はバランスを崩し、僕は弾き飛ばされるように地べたに転がる。体中が痛いけれど、そんなことは気にならなかった。いや、違う。本当は泣きそうなほど痛くて、蹲りたくなるほど痛かったけれど、気にしているような暇は無かったんだ。
 君には見えないだろうけど、大きく手を振ろう。この想いよ、届けとばかりに。
 君には聞こえないだろうけど、力いっぱい叫ぼう。この声よ、届けとばかりに。
「約束だ!! 必ず! 必ず、また……いつの日か……」
 叫びは次第に小さくなり、「また会おう」は声にならず、嗚咽が漏れだす。君に出来なかった代わりとばかりに自らを強く抱きしめ、人目も羞恥も気にせずに泣き叫んだ。


 聖夜になると町は賑わいだしたけれど、君がいない今、僕にとっては静寂と同じだった。
 君と一緒にいた時の心地良い静けさではなく、寂寥感に満ちた空虚な静寂。
 自然と「世界に一人きりみたいだなぁ」という呟きを零した。
 錆び付いた車輪が上げる悲鳴は先日と打って変わって弱々しいものだった。今にも崩れてしまいそうな、僕の心を映したような悲鳴。それでも車輪は残された僕一人をを運び続ける。
 君の温もりは微かに背中に残っているような気がする。

 今なら、はっきりと言えるよ。

「約束だ。また、いつの日か会おう。必ず」



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解説

この作品はBUMP OF CHICKENさんの『車輪の唄』を聴いて、突発的に書きたくなったものです。
BUMPの『車輪の唄』を小説化した感じです。
ボクの稚拙な文ですので良く思わない方がいらっしゃると思うのでここでお詫びさせて頂きます。
すみませんでした。
ただ、厚かましいですが、このまま載せることを許していただけると幸いです。
また、この作品を読んで感想指南などございましたらどうぞ遠慮せずに書き込んでください。
書き込んでいただけるととてもうれしいです。
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イフト ソラ

Author:イフト ソラ
▽呼び方:ソラとお呼びください
▽年齢:18 (大学1年生)
▽誕生日:1月16日
▽所属:心理学科
▽夢:小説家
▽趣味:読書(お気に入りのジャンルは異世界モノや近未来モノ等のファンタジー。ハードカバーもライトノベルも読みます。)
▽最近のお気に入り
・ムシウタ(角川スニーカー文庫)
心霊探偵八雲(文芸社)
・しにがみのバラッド。(電撃文庫)
▽好きな食べ物・飲み物:甘いもの全般(特にチョコレート、クッキー)・牛乳、ココア、ミルクティー、炭酸飲料
▽skype表示名:ソラ
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