ソラのカケラ

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日記と共に自作小説を載せています♪たまに読んだ本の紹介もしています。イラストとかも載せていくつもりです。怖い話募集中

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?See me , Call me?

  • 2010.01
  • 22

Edit243

 いつからだったろうか? パパもママも私を見てくれなくなったのは、私の名前を呼んでくれなくなったのは。
「にぁ?」
 足元に猫が慰めるように擦り寄ってくる。靴下を履いたように足の先だけが白くなった黒猫、数年前に捨てられていたところを私が拾ってきた猫。
「ありがとう。カカ」
 靴下を音読みにして『カカ』、私がつけた名前。私が「カカ」と呼んであげたときだけくすぐったそうに耳を動かす。
「よしよし」
 パパとママはあたかも私がいないように振舞い続ける。いくら読んでも泣き喚いてもこっちを見向きもしない。
「私のこと、嫌いになっちゃったのかな?」
 唯一、私がここにいることを認めてくれるように振舞うカカ。
私の足元、日向で丸まったカカに顔を押し付けた。毛が皮膚にあたって少しくすぐったい。
 背中に当たる窓越しの陽光が気持よく、空腹以上に強い眠気が襲ってきた。そのまま丸まったカカを枕に眠りについた。


     §     §     §


「アリス、起きて。」
 揺すり起こされて目が覚める。まだ眠い目をこするとそこは車の中。
「もうデパート着にくよ」
 再び母親の声が耳朶をたたいた。嫌な夢を見ていた気もするがそんなものはすぐに吹き飛んだ。今日は日曜日。デパートに連れて行ってもらう約束をしていた日だ。
 デパートを見ようと頬を押し付ける勢いで窓の外を見やると丁度、交差点に差し掛かりデパートの外壁にかかった看板が目に飛び込んでくる。
――そして同時に大型のトラックの前面も。
 フロントガラス越しに見えた不精髭の運転手は片手に携帯電話を持って目を驚愕に見開いていた。
 そこからの出来事はスローモーションのようにゆっくりとしていた。
 私の乗っていた車は赤信号にもかかわらず交差点に進入して来たトラックを避けきれず、トラックは車の側面後方、ちょうど私のいるあたりに突っ込む。目に見えてのフレームが歪み、私を押しつぶすように迫ってきた。


     §     §     §


 最悪の目覚めだった。夢で思い出す羽目になるなんて。否が応でもその後のことも思い出す羽目になるのに……
この事故で私は生と死の狭間を三日三晩彷徨ったらしい。次に私が目覚めたのは事故から一週間ほど経ってからだった。その時に見た両親はとてもやつれて見えたのをよく覚えている。それでも私が目を覚ましたのを見た時には涙を流して抱きしめてくれた。事故で自分たちも怪我をしているのに、だ。
 その後もリハビリをするときも一緒にはしないまでもそれに近い勢いで応援をしてくれていた。そのおかげで辛いリハビリも耐えられた。
 長いリハビリと共に立ち塞がったのは発作だった。私には難しくて分からなかったが、全身が痙攣して意識が朦朧とするのだ。それが、事故の後、時折表れては私の身体を蝕んでいった。発作が起こるごとに体力が落ちていくのがわかっていた。
 それも、時間が経つにつれて回数が減り、リハビリが終わるころには発作は起こらないようになった。ただ、そのころには身体の内側の方にだいぶガタがきていたようですぐに息が切れるようになっていた。
 それでも退院することができだんだんに体力も戻ってきた。パパもママも私ほど大きな怪我はしなかったので私が退院する頃にはもう家で普通に生活していた。そこに私も加わって元の生活に戻ったような気がした。ただ、私もその空気が触れれば壊れそうなガラスのように脆いものになっていることにうっすらと気づいていたんだと思う。
――そして、その一週間と二日後の夜だった。私が再び発作を起こすと同時にパパとママの中から私はいなくなった。
思い出したくなくて頭を抱え、イヤイヤと頭を振った。それでもその記憶は振り払うことはできずに私の頭の中でビデオを再生するように鮮明に再生される。

時間はわからない。発作が起こったのが床に就いてからだったから。ただ、その発作はいつもより強かったのは分かっている。
安らかに眠っていた。どんな夢を見ていたかまでは覚えていない。そして、いきなり身体が電流でも走ったように反った。そのまま自分の意志では何一つできなくなり身体が激しく痙攣しだす。意識はほとんど残っておらず、ぼんやりと白い靄がかかっているような感じだった。
その間、両親ともに何もしてくれなかった。決して気付いていなかったわけではないのだ。異変に気づき扉を開いた両親は発作を起こし激しく痙攣をする私を見た途端にその場でへたり込んで動かなくなってしまった。
次、目が覚めたのは朝日が昇った後だった。いつの間にか発作は治まったらしい。ベッドを下りその足で階下のリビングへ行くとパパとママはいつものように動いていた。昨日のことなど無かったかのように話をしながらパパは朝食を摂り、ママは食器を洗っていた。
「おはよう。パパ、ママ」
 わざと昨晩の話は出さなかった。テーブルで自分の指定席となっている場所を見るとそこには私の分の朝ご飯は用意していなかった。
 聞こえなかったのかもしれないともう一度、おはようと声をかけるが全く反応がない。完全に無視されていた。
「ねぇ、どうしたの? 怒ってるの?」
 何か怒らせるようなことをしたのかもしれない、と不安になりながらもママのエプロンの裾を掴んだ。
――話し声が止まった。流しから無尽蔵に流れ続ける水の音だけがリビングを満たしていた。
 ママの顔を見上げるとそこにはマネキンがあった。いや、確かにママなのだ。しかし、目は虚ろで何も映しておらず体は完全に止まっていた。無理に動かそうとしても硬直したように固まって動かない。
「パパ! ママが変だ――」
 言葉が途絶えた。焦りを覚えながらパパに視線を向けるとそこにはママと同じように虚ろな目をしてコーヒーカップを口に運ぶ途中で固まったパパの姿があった。

 もう涙は出ない。そんなものはもうとっくの昔に枯れた。空腹すらももう感じなくなっていた。初めのころは空腹を感じていたが一月もしないうちに感じなくなっていた。
 パパもママも基本的には私を全く認識していないように感じる。それでも無意識なのかわからないけれど確実に私を避けている。最初のように硬直するのは私が触れた時だけだった。そして片方が硬直して、もう片方がそれを視界の中に捉えられる範囲にいる場合は同時に、触れていないもう片方も硬直する。そして硬直している間のことは記憶にないらしい。
 既に私自身が本当に私がここにいると信じられなくなってきていた。
 視界の隅にテーブルが映った。夕飯の準備をしているのでテーブルの上には皿が並べられていた。
 もう精神的に参っていたのだろう。自分でも何も考えないうちに皿の一枚を手にしていた。そして、それを振りかぶると床に叩きつけた。
 当然のように白い皿は甲高い大きな音と共に砕け散って破片が当たりに散らばった。
 食器を運んできたママがその光景を目撃して呆然としていた。そう、硬直ではなく呆然と。目には硬直している時の虚ろさではなく恐怖が色濃く現れていた。当然だろう、ママから私が見えていないなら皿が勝手に宙に浮かび床に特攻を仕掛けたのだから。
 そこではたと気づいた。見てもらえなくても、声を聞いてもらえなくても存在を感じてもらえる方法に。


     §     §     §


 その少女は『死んで』いた。
 身体は生きているけれども誰にも認識されていない生きていないのと同じことだった。
――ふと、頭の隅に自らを『セカイ』と名乗った人形(ひとがた)のことがよぎった。
 少なくとも肉体など存在せず、決して人では無かったのにも拘(かかわ)らず自らを人間であると認識することで『人間』となった人形。
 それに対してあの少女は生きた人間であるのにも拘らず自らを『人間』と認識することすらできなくなっていた。認識されることで人以外も『人間』なのだとしたら、認識されない人間は『死んで』いる、と同義なのだろう。

 少女がまだ、空腹を感じていた時のことだった。


     §     §     §


 私は事あるごとに物を動かした。
物を投げ、陶器を割り、スイッチというスイッチを入れ、切った。パパもママも私の存在を恐怖の対象として認めてくれている。それだけで十分だった。

「寂しかったんだよね? もう、そんなことしなくて良いんだよ?」

 声がした。


     §     §     §


「寂しかったんだよね? もう、そんなことしなくて良いんだよ?」
 少女は驚いたような顔で首をめぐらせた。
「私はミウ。もうひとりはルイ。貴女を迎えにきたよ」
 ミウと名乗った金髪の少女はいつの間にかアリスの後ろに立っていた。ミウの後ろには銀髪の少年もいる。
「あなた達は誰ですか?」
 恐怖の対象として存在を許された少女が恐怖した。それは自らの存在否定。
「神様見習い。死神みたいなものだよ」
「私はまだ死んでないッ!」
 アリスはミウの台詞が終わるか終らないかというところで叫び、手近に落ちていたナイフをミウに向かって投げた。
 しかし、ナイフは空しくミウの体をすり抜け壁にぶつかって床に落ちた。
 ルイがどこからともなく取り出した死神の代名詞ともいうべき大鎌を構えていた。その視線はアリスの細い首に向けられている。
 一歩前に出るために体重を移動した瞬間、その視線がミウの手で遮られた。
「いいよ。 私がやる」
 一言そう言うと、全てを包み込むような笑顔を浮かべたまま一歩ずつアリスに歩み寄っていった。
 アリスの方はミウに警戒心を抱き、小動物のような雰囲気を漂わせているものの動くことはできていない。
「もう、怖がらなくていいんだよ。大丈夫、目を閉じて」
 ミウはアリスの頭に手を回して抱きしめた。するとミウの背中から天使のような翼が広がり、アリスを包んだ。
 純白の翼で作られた繭からはらりはらりと黒い羽根が冬の雪のように零れ落ちてくる。
 その一部始終を過ぎ近くにいるアリスの両親は気付かない。
何もないように会話をつづけている。「この子が産まれたら何て名前をつけようか?」「男の子だったら譲司(ジョージ)、女の子だったら真理亜(マリア)にしよう」そんな会話がアリスの耳に届いていた。
(弟か妹ができるのにパパとママを独り占めしちゃ可哀そうだもんね)
 アリスは静かに目を閉じた。
黒い羽根が落ちなくなるとゆっくりとした動きで繭が開いた。その中から光が夏の蛍のように飛び出しただけでアリスの姿は無くなっていた。
ミウの手の中に残ったのは雪月花――季節ごとの美しいものを凌ぐほど純粋で綺麗な結晶だけだった。


      §     §     §


 カカだけは全てのことを見ていた。その続きも。
「やっぱり、女の子だったら亜梨子(アリス)にしよう」
 アリスの父親が言った言葉。
 そして、知っていた。
アリスの母親の腹の中に新しい命など無いことも。


                        ? 私を見て、私を呼んで ? fin


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three

subject

初めまして、threeと言います。

小説一作品だけですが、読ませていただきました。
文章表現がとても上手だと思います。

個人的には、「、」を入れると、さらに読みやすくなるかもしれません。
ソラさんの地の文は、長いものが多いです。だから、読む人の息継ぎのために「、」を少し増やしてもいいと思います。これは場所によってなので、全ての文章に入れる必要はないですよ。

あとは細かいところですが
「目を驚愕に見開いていた」→驚愕は入らない気がします。
「私の分の朝ご飯は用意していなかった」→用意されていなかった、の方がいいと思います。

長々とすみません。
これからもがんばってください。

イフト ソラ

subject返信

threeさん>
ご指南、ありがとうございます!!
返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
細かいところまでご指摘いただき感謝の極みです。

次からは息継ぎを意識して書いてみます!!

これからもたまに見に来ていただけると幸いです。

(編集・削除用)
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イフト ソラ

Author:イフト ソラ
▽呼び方:ソラとお呼びください
▽年齢:18 (大学1年生)
▽誕生日:1月16日
▽所属:心理学科
▽夢:小説家
▽趣味:読書(お気に入りのジャンルは異世界モノや近未来モノ等のファンタジー。ハードカバーもライトノベルも読みます。)
▽最近のお気に入り
・ムシウタ(角川スニーカー文庫)
心霊探偵八雲(文芸社)
・しにがみのバラッド。(電撃文庫)
▽好きな食べ物・飲み物:甘いもの全般(特にチョコレート、クッキー)・牛乳、ココア、ミルクティー、炭酸飲料
▽skype表示名:ソラ
▽skype名:ihutsora
▽mixi: http://mixi.jp/show_friend.pl?id=25820802
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